
ジムの成長ガイドを開くと、どれも似たようなアドバイスが並んでいます。広告を出す、集客の導線を埋める、クラスを増やす、会員を増やす、2店舗目を出す。とにかく成長、成長、成長です。
Josh Littletonは、そのほとんどを無視してカンザスシティの柔術ジムを築きました。
彼はCast Iron Jiu-Jitsuを3人から始めました。
12年後、会員数は最大107人に達しました。彼はその数字を、規模と同じくらい、そこまでにかかった時間の長さも含めて誇りに思っています。
彼はあえてゆっくり成長しました。すべてを柔術の質に賭け、会員数はそれ自身のペースでついてくるに任せたのです。
甘い考えに聞こえるかもしれません。でも実際にうまくいき、周りの派手なジムが急に満員になっては中身が空洞化していくなかでも、うまくいき続けたことに気づくはずです。
それを可能にしたのは規律でした。柔術の質が保てる速さでしかジムを成長させない、という規律です。
成長を追うと裏目に出る理由
ジムを経営していると、早く成長しなければというプレッシャーが絶えず、しかも強くかかってきます。
競合のInstagramはどれも、マットが人でいっぱいに見えます。マーケティングの専門家は誰もが、春までに新規会員50人を約束する集客の仕組みを持っています。売上の少ない月はどれも、自分が遅れをとっている証拠のように感じられます。
そこで、いちばん早く人数を増やせる手段に手を伸ばし始めます。派手な体験キャンペーン、帯を量産するキッズプログラム、トレーニングの質が伴うかどうかに関係なく人を呼び込める何かです。
それは理解できる本能です。そして、良いジムが平凡なジムに変わっていく道筋でもあります。
弱い土台の上での成長は、まだ測っていない水漏れのようなものです。部屋は人で埋まり、トレーニングは薄くなり、本当に真剣な人たちは、体験の人が入ってくるのと同じ速さで去っていきます。
残るのは、にぎわってはいても良いとはいえないジムと、立て直すのに何年もかかる評判です。
逆の順番でやれば、計算はあなたに有利にひっくり返ります。本当に質の高い指導で知られるジムは口コミで成長し、獲得した会員を手放さず、10年にわたって積み上がっていきます。それがJoshの選んだトレードオフです。
これはマーケティングが無意味だという意味ではありません。 武道スクールを成長させる一般的な方法 は、どれも質の土台の代わりに使うより、質の土台の上に重ねたほうがうまく機能します。
「ほかのことはすべて後からついてくる」
これから開業する若いオーナーにどんなアドバイスをするかと聞かれたとき、Joshはマーケティングの話はしませんでした。マットの話をしたのです。
細部に集中して、柔術の質に集中すること。ほかのことはすべて後からついてきます。ビジネスだけに集中すれば、たくさんの人を呼び込むことはできます。でも柔術の質が伴わなければ、よくあるMcDojoになってしまうだけです。
最後の言葉こそが警告です。
McDojoは失敗したジムではありません。間違ったことで成功したジムです。入会者数を追いかけ、人々が居心地よくいられるよう基準を下げ、結果として満員の部屋と中身のないサービスが残ったのです。
逆の賭けをして 利益よりも武道そのものを優先してきたオーナーはたくさんいます。Joshもその1人です。
Joshは、その誘惑が愚かなものではなく現実的なものだと冷静に理解しています。
「そのときはいいアイデアに思えるんですよ」 と彼は言います。 「昔ながらの空手の人たちは何年もそれをやってきたし、それでお金を稼ぐ方法をわかっているんです」 生計を立てる方法としては実績があります。ただ、彼が運営したいジムではなかったのです。
彼の考え方はもっとシンプルです。 「質の高い柔術がある良いジムにしたい。そうすれば、ジムは成長するだけ成長するんです」 トレーニングの質はあなたがコントロールできます。それがどれだけ早く会員数につながるかはコントロールできません。そして会員数を直接追いかければ、トレーニングをごまかしたくなる誘惑にかられます。
「フレンドリーで、競技的」
「質を最優先に」という言葉にうなずくのは簡単ですが、火曜の夜に実際にやり遂げるのは難しいものです。Joshにとって、それは2つの言葉で表せる文化に集約されます。
私のキャッチフレーズは、ずっと「フレンドリーで、競技的な柔術」です。部屋に入ってきた人には、フレンドリーな人たちと出会ってほしい。そして、望むだけ競技に打ち込める選択肢もあってほしいんです。
ほとんどのジムはどちらかの側を選びます。初心者が尻込みするような厳しい競技ジムになるか、誰も本気になってはいけないゆるい趣味のジムになるかです。
Joshは、どちらの極端も罠だと考えています。彼はその選択をこう表現します。 「大衆にチケットを売るだけの完全な競技ジムか、競技者を怖がって、まるで檻の中の動物のように彼らのことを話す完全な趣味のジムか」
両方を取るやり方は、ビジネスとしても優れています。
「全員がプロで、全員がチケットを売っていたら、チケットを買う人がいません。だったら、プロが一般の人たちと一緒に練習して、一般の人たちができるだけ上達できるよう手助けし、チケットを売る相手もいるようにすればいいじゃないですか」
シンプルな循環です。 競技者は部屋全体のレベルを引き上げ、趣味で練習する人たちは、競技者に練習相手と居場所となるコミュニティを与えます。
全員が上達し、誰も飽きず、ジムは人々が何年も通い続ける場所になります。近所の安い体験レッスンに乗り換えられるのではなく、 誰も離れたくない文化 が育つのです。
その定着率こそが経営を支えます。会員を手放さないジムは、毎月マーケティング競争に勝つ必要はありません。良いジムであり続ければいいのです。それこそが、Joshが最初から目指していたことです。
忍耐こそが戦略だった
3人から107人への歩みの遅さは、戦略そのものでした。
Joshは、柔術の誠実さを保てる速さでしかジムを成長させませんでした。
初期の頃について話すとき、何度も出てくる言葉は 忍耐です。彼は数字を無理に追うのではなく、時間をかけて成長させました。そうやって築かれたジムは、自らの質を追い越すことはなく、実際にきちんと教えられる以上の人数を入会させることもありません。
同じ忍耐は、バックオフィスの運営にも表れています。
Joshは何年もCast Ironを紙で管理していました。必要になる前にシステムを導入するのは、大きな組織に見せかけようとするもう1つのやり方にすぎません。彼は、痛みが現実的かつ具体的になるまで待ちました。
私は全部を紙でやっていて、時間をかけて成長させていました。そしてある時点で、会員をきちんと管理していないせいでお金を失っていることに気づいたんです。そのときが、ソフトウェアに切り替えるべきタイミングだとわかりました。
会員数が40人を少し超えたところで、紙では回らなくなり、損失が出始めました。
その段階を過ぎると、システムを 持たない ことが、会員とお金を失う原因になります。そこで彼は 武道ジム向けソフトウェア に移行し、請求、出欠、同意書を自動化しました。スプレッドシートではなく、マットに意識を向けられるようにするためです。
教訓は「できるだけ長く待て」ではありません。Joshのやることすべてに共通する教訓と同じです。ジムのためになるときに、それを取り入れることです。
優れたシステムがあれば、質を最優先するジムが、創設者をボトルネックにすることなく成長できます。そして頭の中で把握しきれないほど会員が増えたときに、 オンボーディングと定着 に対応する手段にもなります。
拡大でさえギャンブルはしない
彼はまだ2つ目のジムを開いていません。しかしすでに計画は描いていて、その計画はわかりやすいギャンブルを避けています。
「私個人の事業計画では、ある程度の規模まで成長させたら、比較的近くにもう1つジムを開いて、会員を20人一緒に送り出すつもりです。そうすれば、初日にドアを開けた時点で、ある程度の経費はもうまかなえています。ゼロからのスタートではないんです」
ほとんどのオーナーは2店舗目を開いて、会員が埋まることを祈ります。Joshの発想は、空っぽの部屋という状態そのものを飛ばすことです。最初のジムの会員で新しいジムの基盤をつくり、開業初日から黒字にする。1店舗目で発揮しているのと同じ規律です。彼は町の名前まで挙げています。
「次の道を上った先の町がカーニーです。たぶんカーニーに1つ開いて、20人か30人を一緒に送り出すと思います。そしてその段階では、20人か30人を手放しても大損せず、みんなが得をするような状態になっていたいですね」
これは忍耐強い経営者なりの拡大のやり方です。最初のジムが、ためらわずに会員を手放せるほど強くなるまでは動かない。(2店舗目を視野に入れているなら、署名する前に コミュニティを失わずに拡大する 仕組みを研究しておく価値があります。)
ゆっくり成長し、良いジムであり続ける
Joshは、何がなんでも成長することへの反証を示しました。12年、107人、1つの部屋です。
重要なポイント:
質を後回しではなく、出発点にする。 指導の質はあなたがコントロールできます。成長はそのあとについてきます。成長を直接追いかければ、人々が求めてやってきたものを薄めたくなる誘惑にかられます。
フレンドリーで、競技的な部屋をつくる。 本気の人たちにレベルを引き上げてもらい、趣味で練習する人たちには彼らにコミュニティを提供してもらいましょう。その組み合わせが、会員を何年も引き留めます。
質が保てる速さでしか成長しない。 ゆっくり進むことは、ジムをただ大きくするのではなく、良いジムであり続けさせる規律です。
システムは、エゴのためではなくジムのために導入する。 紙のせいで会員を失い始めたらすぐに、事務作業を自動化しましょう。そして良いツールのおかげで生まれた時間を、マットに使いましょう。
どれも「春までに新規会員50人」という看板には収まりません。ただ、12年後も良いジムであり続けるジムを築けるのです。
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